【ネタバレ感想】映画『Chime』はなぜ怖いのか?気付かないふりはもう出来ない

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こんにちは、はな(@hanahackpq)です。

2024年8月2日から、黒沢清監督の新作映画『Chime』の劇場公開が始まりました!

配信プラットフォームRoadsteadのオリジナル作品第1弾として制作され、「今年一番のホラー」と話題となっていた今作。

私も名古屋での公開初日に観に行ってきました!

はな

愛知での上映館は、8月時点ではシネマスコーレ1館のみで、公開初日の初回は見事に満席でした!!

45分という短い上映時間ながら、とにかく黒沢清監督の匠の技に魅せられる一作でした。

この記事では、映画『Chime』はなぜ怖いのか、ネタバレありでご紹介していきます。

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映画『Chime』作品情報

公開日2024年08月02日
上映時間45分
監督・脚本黒沢清
主演吉岡睦雄

映画『Chime』は、黒沢清監督の持つあらゆる恐怖表現を見せてもらえるような、恐怖の美術展のような作品でした

何の縛りもなく制作されたという今作の原点には、黒沢清監督の「『映画の三大怖いもの』を全部やってみよう」という発想があったと言います。

黒沢清監督の思う「映画の三大怖いもの」は、①幽霊、②自分が人を殺してしまうのではという恐怖、③警察に逮捕されること、秩序の側が迫ってくる恐怖、の3つです。

確かに全て詰まっていましたね。

映画『Chime』はなぜ怖いのか

映画『Chime』には、明確なストーリーはありません。

では私たちは、なぜこれほどまでに今作を「怖い」と感じたのでしょうか。

その答えは単純です。

映画『Chime』は、私たちがいつも心の奥底で感じているけど、気付かないふりをしている恐怖や不安をはっきりと描き、突きつけてくる作品なのです。

それでは、今作で描かれた3つの出来事を例に、それがどういうことなのかを見ていきましょう。

頭の中でチャイムが聞こえる青年・田代

「チャイムのような音で、誰かがメッセージを送ってきている」「僕の脳の半分は入れ替えられて、機械なんです」と言い、自らの首に包丁を刺した田代。

田代は単におかしくなっていただけなのか、それとも、彼の耳には本当にチャイムの音が聞こえていたのか、私たちには分かりません。

こんな田代のような人間は現実世界にもいますよね。

彼らは病気かもしれませんし、何か本当に第六感のようなものがあるのかもしれません。

だけど、普通とは違う人間に対して私たちは「危害を加えられるかもしれない」と恐怖を感じ、彼らに気付かないふりをしています。

そんな、普通とは違う人間が料理教室という場にいたら・・・

料理教室という場は、そこにいる人間が一般的な倫理観と、感覚を共有しているからこそ平和であり得るのです。

私たちの持つ常識や平穏は、理解のできない何か、誰かによって容易に崩されてしまうということは、気付きたくない真実ですよね。

主人公・松岡の妻と空き缶

主人公・松岡の妻は、家族での食事中に突然席を立ち、キッチンに置いてある大量の空き缶を乱暴に捨てにいきます。

美しく整頓された自宅、丁寧な生活の中で、空き缶を捨てるときの乱暴な彼女だけがとても異質に映ります。

はな

そして、捨てている空き缶の量が異常で、思わず笑ってしまいながらも、気持ち悪さを感じずにはいられません。

松岡の妻のような主婦たちが、美しい家庭を守りながらも、どこかで負の感情を抱えているということはよくあることです。

そして、それは私たち全員に言えることです。

私たちは生きていく中で、表面では美しく取り繕いますが、見えないところで自らの暴力性(負の感情)を解放しています。

誰もが暴力性を持っている、私たちはそれを知ってはいるけど、見ないように、気付かないようにしているのです。

主人公・松岡の殺人

主人公・松岡は、突然、料理教室の女子生徒を殺しました。

鶏肉の解体が気持ち悪いと不満を言う女子生徒。

松岡が「そこの工程は除いても良い」と言っても「それは嫌だ、論理的に説明してくれ」と反論する彼女の姿は、確かに苛立つものではありましたが、もちろん殺すほどではありません。

とはいえ私たちも、苛立つ相手に突発的に不穏な思考を抱くことは、多少なりともあるのではないでしょうか。

そんな突発的で不穏な思考が行動に結び付き、殺人を起こしてしまうことも、世の中では起きています。

私たち全員、不穏な思考には心当たりがあります。

いつか、もし自分が衝動的に人を殺してしまったら、そう思うとあまりにも怖いですよね。

映画『Chime』で描かれれる恐怖と不安

本記事の中で紹介した3つの出来事の他にも、映画『Chime』の中では、恐怖や不安を呼び起こす多くの要素が描かれています。

女子生徒の幽霊、松岡の家のチャイム、不穏な音響、不気味に笑う息子、上手くいかない人生、など、数えだすとキリがありません。

どの出来事や要素が最も怖く感じるかは人それぞれですが、今作の中に怖いと感じる要素が全くなかったという人はいないのではないでしょうか。

私たちの身近にはいつも気付きたくない類の恐怖がある、そう気付かされてしまいます。

まとめ

この記事では、映画『Chime』はなぜ怖いのか、ネタバレありでご紹介しました。

45分という短い時間ながらも、強く記憶に、そして心に残る映画体験でした。

2024年9月27日には、同じく黒沢清監督の映画『Cloud クラウド』が公開されるので、私はすごく楽しみです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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