【感想】映画『どうすればよかったか?』答えのない問いを、私たちは考える

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こんにちは、はな(@hanahackpq)です。

2025年1月3日から1月5日までのミニシアターランキング(興行通信社)が発表され、映画『どうすればよかったか?』が3週連続首位となりました。

統合失調症の姉と、姉を精神科の受診から遠ざけ、家の中に閉じ込めた両親。

そんな家族の20年にも渡る記録である今作は、私たちにも「どうすればよかったか?」と問いかけます。

この記事では、映画『どうすればよかったか?』を観た私の感想をご紹介します。

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映画『どうすればよかったか?』作品情報

面倒見がよく、絵がうまくて優秀な8歳ちがいの姉。両親の影響から医師を志し、医学部に進学した彼女がある日突然、事実とは思えないことを叫び出した。統合失調症が疑われたが、医師で研究者でもある父と母はそれを認めず、精神科の受診から姉を遠ざけた。その判断に疑問を感じた弟の藤野知明(監督)は、両親に説得を試みるも解決には至らず、わだかまりを抱えながら実家を離れた。

このままでは何も残らない——姉が発症したと思われる日から18年後、映像制作を学んだ藤野は帰省ごとに家族の姿を記録しはじめる。一家そろっての外出や食卓の風景にカメラを向けながら両親の話に耳を傾け、姉に声をかけつづけるが、状況はますます悪化。両親は玄関に鎖と南京錠をかけて姉を閉じ込めるようになり……。

20年にわたってカメラを通して家族との対話を重ね、社会から隔たれた家の中と姉の姿を記録した本作。“どうすればよかったか?” 正解のない問いはスクリーンを越え、私たちの奥底に容赦なく響きつづける。

引用元:映画『どうすればよかったか?』公式サイト
公開日2024年12月7日
上映時間101分
監督藤野知明

映画『どうすればよかったか?』は、藤野知明監督が自身の統合失調症の姉と、両親の姿を20年にも渡って撮影した衝撃のドキュメンタリーです。

既に姉と母は他界しており、唯一健在な父に了解を取って今作の公開に踏み切ったそうです。

感想|私たちは知らない、判断はできない、だけど考える

映像作家・想田和弘さんが今作に「解釈を拒む奇妙で厳しい現実を、そのままゴロっと差し出したような映画である」とコメントを寄せていましたが、まさにその通りで、今作の鑑賞後は表現できない感情が胸につっかえたような感覚に陥りました。

今作の感想を言葉にすると、言葉で表現しきれない部分がどうしてもたくさん出てくる気がして怖いです。

とはいえ、言葉で表現できる部分だけでも、自分の率直な感想として残せたら、と思っています。

「どうすればよかったか?」の答え

映画『どうすればよかったか?』は、統合失調症の姉・マコさんの記録としても、1つの家族のあり方や人生を映す記録としても、すごく苦しいものでした。

「どうすればよかったか?」

監督にとって、その答えは「早くに両親を説得し、姉に適切な治療を受けさせていればよかった」と明確です。

たしかに、一観客として今作を観ていても、マコさんに治療を受けさせることを拒んでいた両親の行動が正解だったとは思えません。

だけど親と言えども人間は未熟なもので、本心から子の幸せを願って行動しているつもりで、実際には自分の思う正解を(それが誤りであっても)突き通してしまうこともあるでしょう…

また、映画『どうすればよかったか?』は、姉のマコさんが統合失調症を発症したと思われる日から18年後に撮影を開始しており、映画を観ているだけの私たちは、家族が悩んで過ごした18年を知りません

いくら両親の選択がベストではなかったとしても、私たち観客には、マコさんの両親の選択を「誤り」だと言うことはできないと思います。

また、統合失調症の家族への向き合い方、病気の程度や、合う治療は人それぞれ異なる中で、マコさんのケースにおける「できていたらよかった対応」が、他の方のケースにも最適かは分かりません。

そういう意味で、「どうすればよかったか?」は答えのない問いでもあります。

だけど今作は確実に、今悩んでいる誰かの助けになりますし、私たちが今作を通じて「どうすればよかったか?」考えることには少なからず意味があると思うのです。

解釈の余地を与える怖さ

―当時のことについてお父さんに監督が尋ねる最後の対話は胸に迫るものがありました。個人的に驚いたのは「どうすればよかったか?」という問いにお父さんが「失敗したとは思わない」と答えていたことでした。

藤野:その直前に僕が「うちは失敗例だ」と言ったんです。それに対し父は「失敗じゃない」と答えたんですよね。ただ僕が納得する答えを言うまで続けても、それは父の本心ではないとわかっていたので、くどくは聞きませんでした。期待するようなことを引き出せなくとも、それが内包するものは観ている人に伝わるかなと。

引用元:Yahoo!ニュース「この映画は『失敗例』」。統合失調症の姉と家族を記録した映画『どうすればよかったか?』監督が語る胸中」

今作が映像作品として世に出ることには、大きな意味があると同時に、解釈の余地を与える怖さもあると感じました。

藤野監督の「どうすればよかったか?」という問いに対し、父が「失敗したとは思わない」と答えている場面がありました。

インターネット上の映画の感想では、その場面に対し「子の人生について、失敗、成功という言葉が出てくるのが理解できない」「この期に及んで自分の行動を肯定するのか」といったコメントも見られました。

しかし、父のあの言葉は、監督が「うちは統合失調症の対応の失敗例だ」と言ったことへのリアクションだそうです。

やはり私たちは、映像外に自分たちが知らないことがたくさんあることを、ちゃんと念頭に置かないといけないです。

また、今作の冒頭では「姉が統合失調症を発症した理由を究明することを目的としていない」「統合失調症とはどんな病気なのか説明することも目的ではない」と2つの前提が提示されます。

この前提の提示は素晴らしかったと思います。

私たちはたった数時間の映像を観て、この家族や、統合失調症という病気を知ったつもりにならないように気を付けないといけません。

だから口を閉ざさないといけない、ということではなく、私たちは「知らない、判断はできない」という前提でたくさん考えていきたいです。

まとめ|過去から学び、助けられる

この記事では、映画『どうすればよかったか?』を観た私の感想をご紹介しました!

私自身、同じような状況で悩んだ経験があり、今作を観てその記憶が強くよみがえってきました。

私の家族の場合には藤野監督の家族とは違った解決策を取ったのですが、もちろん症状の程度や状況は全く異なるので、自分たちの取った行動が誰にでも当てはまる正解だとは思っていません。

だけど確実に言えるのは、誰にでも当てはまる正解はない中でも、過去から考えたり、学んだり、助けられることはきっと多くあるということです。

映画『どうすればよかったか?』が、多くの人に届くといいなと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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