画像引用元:映画『ナミビアの砂漠』公式X
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こんにちは、はな(@hanahackpq)です。
2024年9月6日公開の映画『ナミビアの砂漠』を観てきました!
今作は、第77回カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞した作品です。
主演が河合優実さんということもあり、公開前から話題になっていましたね♪
この記事では、映画『ナミビアの砂漠』の感想をネタバレありでご紹介します。
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映画『ナミビアの砂漠』作品情報
世の中も、人生も全部つまらない。やり場のない感情を抱いたまま毎日を生きている、21歳のカナ。優しいけど退屈なホンダから自信家で刺激的なハヤシに乗り換えて、新しい生活を始めてみたが、次第にカナは自分自身に追い詰められていく。もがき、ぶつかり、彼女は自分の居場所を見つけることができるのだろうか・・・?
映画『ナミビアの砂漠』公式ホームページより
公開日 | 2024年09月06日 |
上映時間 | 137分 |
監督・脚本 | 山中瑶子 |
主演 | 河合優実 |
今作の監督・脚本を務めた山中瑶子さんは、なんと1997年3月1日生まれの27歳。
今を生きる20代の監督だからこそ生み出せた今作なのだと思う一方で、長編1作目にしてこのクオリティー!?と山中監督の才能が怖いです。
そして私も1997年3月生まれなので、監督同い年~!!と嬉しいです。
また、主演を務めた河合優実さんは、自身の「人生を変えた映画」に山中瑶子監督の中編映画『あみこ』を挙げており(コラムはこちら)、数年前から山中監督の作品への出演を熱望していたのだと言います。
そんな山中監督と河合優実さんのタッグで生み出された今作、とにかく河合優実さんの魅力が詰まった作品で、全てのシーンが眼福でした。
そして、金子大地さん、寛一郎さん、そして出演シーンは少ないながらも絶大な存在感を放っていた唐田エリカさん・・・俳優陣全員よかったです。
感想 | カナは今を生きる若者そのものだ
映画『ナミビアの砂漠』は、カナの生き方や考え方を理解できるかどうかで賛否が分かれる作品だと思います。
そして、今を生きる若者こそ、カナの生き方や考え方を本当の意味で理解できる世代なのだと思います。
私個人の考えとしては、生き方や考え方の傾向を世代で区切って考えることは、ある意味乱暴な側面もあるので、あまり好きではありません。
だけどやはり今の20代は、物心ついた頃から携帯電話を持ち、SNSで他人と繋がり、社会に出た途端「終身雇用は終わった」「自分自身のスキルを磨け」だなんて言われて、訳が分からないまま「私のしたいことってなんだ」「私には何があるんだ」と否が応でも考えさせられてきた世代だと思うのです。
情報過多の今に疲れ、自分が分からない、そんな若者。
カナは決して特別な存在ではなく、まさに今を生きる若者そのものなのです。
カナにとって、世の中はどうでもいいことばかり
きっと、カナは他人に興味がないわけではありません。
カナにとって、世の中はあまりにもどうでもいいことばかりで、心が動かされないだけなのです。
例えば、カナは友人のイチカから呼び出され「同級生が自殺で亡くなった」という話を聞いています。
カナは最初は「ちゃんと聞くぞ」という顔をしているのですが、次第にイチカの声がどんどんフェードアウトしていきます。
それに比例して、近くの席の男性たちが話している「ノーパンしゃぶしゃぶ」の話題ばかりが耳に入ってきます。(くだらないけど、きっとカフェで聞こえてきたら気になる笑)
このシーン、私も「分かる~~~~~~!!!!!」と叫びだしそうでした。
イチカ役の新谷ゆづみさんの表情の演技のうまさも相まって、イチカは完全に「同級生が自殺で亡くなった」という出来事を、ある意味ゴシップ的に楽しんでいて、その渦中にいる自分自身に酔っている様子でした。
だからこそカナは「あ~そういう感じね」と興味を失ったのでしょう。
カナは決して冷たい人間ではないんです。
恋愛に刺激を求めるカナ
カナにとって世の中はどうでもいいことばかりだからこそ、彼女は恋愛にばかり刺激を求めてしまうのです。
元彼のホンダは、家事をこなし、料理をし(しかも作り置きまでしてくれる)、カナが酔って帰ってきたら介抱をし、とにかく全身全霊でカナを受け入れ、愛していました。
一観客としては「ホンダは最高の彼氏、絶対手放しちゃダメ!!!」と思っていたのですが、カナはホンダとの安定した生活をつまらなく感じ、ハヤシとの生活を始めます。
実際に同棲を始めるとハヤシとカナは、物理的にも精神的にも衝突ばかり。
とはいえ、別れそうで別れず、二人は二人なりの互いへの向き合い方を模索していきます。
どんどんハヤシがホンダ化していく未来が容易に想像できて、カナはこうやって過去の恋人たちとのパワーバランスを作り上げて行ったのだろう、と思わされました(笑)
きっとカナは、このような恋愛をこの先何度も繰り返していくのだと思います。
「今」と「今を生きる私たち」をリアルに描く
今作は、あまりにも「今」そして「今を生きる私たち」をリアルに描いています。
予告編にもある「うわ、紙ストローだ」というつぶやきもそうです。
その他にも、つい笑っちゃうような「今」が高解像度で詰め込まれていました。
まず、カナの勤めている脱毛サロンのモデルは、おそらくミュゼだと思います。
(細かくはうろ覚えですが)「当店のジェルは美容成分のあるものになっておりますので、ふき取りはせず馴染ませていきます」という言葉や、照射する際の「冷たくなります」という言葉は、ミュゼ利用者にはすごく馴染みのある言葉たちです。
そして、脱毛サロンの求人の多くが「学歴不問、女性が多い職場で働きやすい、高収入」なので、「特にこれといってしたいことがない」というカナが選ぶ職場として脱毛サロンはすごく納得感がありました。
次に、出張から帰ってきたホンダが「風俗に行ってしまった」と謝るシーンも素晴らしかったです。
カナは浮気をしているので、ホンダが風俗に行ったくらいでダメージは受けないのですが、全力で謝ってくるホンダを見て「あ、ホンダと別れる良いきっかけができた~」とでも言うような、ずるい表情をするんですね。
私が大好きなのは、このシーンで謝っているホンダがユニクロのエアリズムらしき肌着を着ていること。
申し訳ない気持ちのまま北海道出張から帰ってきて、とりあえずシャツを脱ぎ、お土産をカナに渡し、ヨレっとした肌着のまま謝るタイミングを見計らっていたであろうホンダの一連の流れが想像できて笑っちゃいました。
そして、私が最も恐怖を感じて、かつ愛おしく思ったのは、ハヤシとカナがホンダの作った冷凍のハンバーグを食べている場面です。
元恋人の作ったハンバーグを、そのことを知らない恋人と一緒に、美味しいね、と食べる。
こんなグロテスクすぎるシチュエーション、恋愛においてはよくあることだと思います。
その他にも、今作の中には思わず「分かる!!!」と叫びたくなるような「今」が切り取られていました。
カナの現実と心理世界
映画『ナミビアの砂漠』の後半では、カナの現実と心理世界がシームレスに映し出されます。
例えば、隣人の女性とのキャンプのシーンや、トレッドミルで走るシーンはカナの心理世界だと思います。
ベランダ越しに微笑みかけてくれた隣人の女性。
カナは時々、隣の部屋でオンライン英会話をする彼女の声に耳を傾けていました。
オンライン英会話をしている隣人の女性は、きっと人生に何かの目標を持ち、強く生きている。
そんな隣人の女性は、カナにとって救いのような、少し言い過ぎかもしれませんが、ある意味憧れのような存在だったのではないでしょうか。
また、トレッドミルで走りながら自分たちの取っ組み合いの動画を見ているシーンは秀逸でした。
私はこのシーンを見て「超わかる!!!」と心の中で叫んでいました。
目の前にいる恋人と喧嘩をしている時、誰かの話を聞いている時、相手と向き合いながらも、そんな自分の姿を俯瞰して見ている気分になること、私にもよくあります。
情報過多ゆえに目の前のことに集中しきれない、本気になりきれない、そんな私たちをすごく上手に表現していると感じました。
トレッドミルのシーンは、人によっていろいろな解釈がありそうですね!監督の意図が気になります。
まとめ | 20代の今、2024年の今、観て良かった
この記事では、映画『ナミビアの砂漠』の感想をネタバレありで紹介しました。
私は今作を観ている時、前半のテンポが良い分、後半で少し長さを感じてしまいました。
だけどその時に感じた「カナはいつまでこんなこと続けるんだ」みたいな気持ちを含めて、今を生きる私たちのリアルで、観終わった後からはなんだか愛おしく思っています。
20代の今、2024年の今、観て良かった作品です。
そして、今作が好きだった方は是非『わたしは最悪。』と『猿楽町で会いましょう』を観てほしいです!
どちらの作品にも、今を生きる私たち、カナがいます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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日本映画だと、2001年の黒沢清監督『回路』、2021年の濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』などが、過去に同賞を受賞しています!