【コラム】映画館と動画配信サービスの共存 | 映画という習慣

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こんにちは、はな(@hanahackpq)です。

突然ですが、私は先日、デヴィット・フィンチャー監督の最新作映画『ザ・キラー』を映画館で鑑賞してきました!

Netflix独占配信作品の今作は、2023年10月27日に全国の一部映画館で先行公開され、その後2023年11月10日よりNetflixにて独占配信を開始しました。

このように、近年では主に配信向けとして制作される作品も増えてきています。

映画好きの私からすると、映画館で映画を観るという映画体験も、観たい時に観たい作品をサクッと観る動画配信サービスでの鑑賞も、どちらも不可欠です。

だからこそ、動画配信サービスの存在感が大きくなり続けていくと、映画館で映画を観る機会が減っていってしまうのではないかと不安に感じています。

そこで、この記事では、映画館と動画配信サービスを取り巻く状況や、映画館と動画配信サービスのこれからの関係性について考えていこうと思います。

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1.動画配信(VOD)サービス市場規模

動画配信(VOD)サービス市場規模が拡大した最も大きなきっかけは、やはりコロナです。

感染症防止のため、多くの映画館が休業、時短営業、席数を減らしての営業と、苦境に立たされることとなりました。

そんな2020年には、多くの映画が公開延期もしくは①映画館での公開なしで配信開始、②映画館と同時に配信開始、③映画館での公開からすぐに配信開始など、新たな流れで公開されていくようになりました。

はな

又吉直樹原作の映画『劇場』が、映画館と配信同時公開!と聞いたときは「新しい時代だ…!」と感じたのを覚えています。笑

2020年に動画配信サービスに登録し、ステイホームで映画を観ていたという方はとても多いのではないでしょうか。

GEM Partners株式会社によって2023年2月17日に発行された「動画配信(VOD)市場5年間予測(2023-2027年)レポート」によると、2019年の動画配信(VOD)サービス市場規模推計は2,925億円だったのに対し、2022年は5,305億円と81.4%増となっているそうです!

『バード・ボックス』(2019年)と『レッド・ノーティス』(2021年)

動画配信サービスの市場規模の拡大は、作品の視聴時間からも明らかです。

IBC “STREAMING VS CINEMA: WHAT DOES THE FUTURE HOLD FOR FILM?“によると、Netflixオリジナル作品『バード・ボックス』(2019年)が総視聴時間 2 億 8,200 万時間を28日間で達成したのに対し、同じくNetflixオリジナル作品『レッド・ノーティス』(2021年)はその記録を18日間で打ち破り、総視聴時間3億2,880万時間を達成したというのです。

That record has since been surpassed by the 2021 comedy action movie Red Notice, which notched up 328.8 million viewing hours and has been seen by over 50 percent of all Netflix users. As reported by Screencrush, Bird Box took four weeks to rack up its 282 million viewing hours. In contrast, Red Notice surpassed that total in just 18 days. It was proof of the soaring demand to stream movies at home and equally of the importance to streamers of securing original must-see content. 

(訳:その後、この記録は2021年のコメディアクション映画『レッド・ノーティス』によって破られました。『レッド・ノーティス』はNetflixユーザーの50パーセント以上が視聴し、総視聴時間は3億2,880万時間を記録しました。スクリーンクラッシュによると、『バード・ボックス』は総視聴時間 2 億 8,200 万時間を達成するのに4 週間かかりましたが、『レッド・ノーティス』はわずか 18 日間でその記録を破ったということです。このことは、家で配信映画を観ることの需要が急増していることや、動画配信サービスにとっても「必見のオリジナルコンテンツ」を持つことの重要性が増していることを示しています)
※この記録=『バード・ボックス』の視聴時間

IBC “STREAMING VS CINEMA: WHAT DOES THE FUTURE HOLD FOR FILM?“より引用

このことからも、動画配信サービス利用者の増加や、私たちの生活における動画配信サービスの重要性が高まっていることが分かりますね。

特に最近は最新作であっても、レンタル配信もしくは見放題配信されるまでの期間は短く、私たちは最新作をより身近に楽しめるようになりました。

映画館での公開からレンタル配信の期間としては、早いと1カ月少し、遅くとも5カ月ほどの印象です。

作品名劇場公開日レンタル配信開始日配信までの期間
『aftersun/アフターサン』2023年5月26日2023年11月1日約5カ月
『プー あくまのくまさん』2023年6月23日2023年11月1日約4カ月
『グランツーリスモ』2023年9月15日2023年11月2日約1カ月半
『バービー』2023年8月11日2023年11月22日約3カ月
『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』2023年6月30日2023年11月24日約5カ月
U-NEXT「【PICK UP】2023年11月のおすすめ配信作品をご紹介」参照

それゆえに「きっとすぐに配信来るし、これは配信でいいかな…」という声もよく耳にします。

2.映画館入場者数はどうなっている?

むぎ

動画配信サービスって本当に便利だよね。でも、動画配信サービス利用者が急増した結果、映画館の入場者数は減ってしまっているのかなぁ…

はな

私もそう思って調べてみたんだけど、実はそんなことはないんだって!

2022年全国映画概況(日本映画製作者連盟、2023年1月31日発表)によると、2022年全国映画館の入場者数、興行収入は大幅に増大となっていたそうです!

昨年1年間の全国の映画館入場者数の合計は1億5,252万5,000人。また、観客が支払った入場料金の合計である興行収入は2,131億1,100万円となりました
興行収入は前年比131.6%、入場動員数も前年比132.4%と昨年、一昨年よりも大幅に増加しています。

この結果は『天気の子』や『アナと雪の女王2』などの作品があり過去最高興収となった2019年の成績(2,612億円)には及びませんが、2000年以降では歴代7位の好成績となっています。コロナ禍前5年間の平均と比べると、20年は67%、21年は71%という結果が出ていましたが、22年は93%まで急回復。コロナ禍前の水準に戻りつつあることが感じられる結果となりました。

サンライズ「【解説】2022年全国映画館の入場者数、興行収入は大幅に増大」より

コロナ禍を経て動画配信サービスがより私たちの生活に浸透し、私たちは映画をより気軽に、手軽に楽しめるようになりました。

そんな現代で、映画館で映画を楽しみたいという人は比較的少数派だと思っていたので、個人的にはこの調査結果はすごく意外でした。

だけどやはり「映画館で観たい作品」というのは確実にあって、そういう作品に関しては、消費者はしっかり足を運んでいるんですね。

3.映画館と動画配信サービスという選択肢

映画館と動画配信サービス、それぞれ以下のような特徴があります。

映画館動画配信サービス
費用1作1,100円~1,900円月500円~2,000円
利便性時間と場所が決まっているので、その時間に映画館へ行く必要がある移動中や自宅など、場所や時間を問わずに観ることができる
自由度スマホの電源を切る必要がある。公共の場であり、自由には過ごせない映画を途中で止められる。スマホの電源を切る必要はない。自宅であれば自由に過ごせる
作品ラインナップ現在の上映作に限られるため数は少ないが、最新作や過去の名作(リバイバル)が観られる最新作はほぼ観れないが、旧作のラインナップは幅広い
鑑賞環境大画面、良い音響で観られる。集中しやすいそれぞれの自宅や機器の環境による。基本的には画面は小さく、音響も普通であることが多い。映画館に比べると集中しにくい

消費者は「映画館で観たい作品」「配信でも良い作品」とを判断しながら、そして自身の環境や状況に合わせながら、劇場と配信どちらで鑑賞するかを選んでいるのですね。

その上で、やはり私は「映画体験」を重視していきたいとも思っています。

「映画体験」という価値

広い意味で言えば、映画体験は映画館に着いた瞬間に始まります。

映画館に着き、チケットを発券しドリンクを買って、自分の席につき、スマホの電源を切ります。

そして、予告編が始まり、こんな映画やるんだ!とか、これ楽しみな作品だ!とか考える。

そして映画が始まると、現実世界のあれこれを忘れ、目の前の物語に集中したり、でも時には、目の前の物語と現実を繋げ、自分事として深く考えたり。

自分の”日常”とは切り離された2時間を過ごします。

この時間自体が、体験として素晴らしいものです。

その上で、映画体験の最も優れた点は、その時の自分のできる限りの集中力で映画と向き合うことで、その作品の良さを最大限に味わえることにあります。

特に私は集中力がない人間なので「これは家で観てたらきっと楽しみ切れなかっただろうな。映画館で観て本当に良かった!」と感じることが多くあります。

はな

この記事の冒頭でご紹介した『ザ・キラー』も完全にそれでした!

だからこそ「これはきっと映画館で観るのが楽しいだろう」「これは家だと集中できないかもしれない」という作品は、劇場で観る作品リストに入れてしまうことがおすすめです。

そういった意味で、「映画体験」そのものに大きな価値があると私は強く思っています。

まとめ:映画館と動画配信サービスの共存

【この記事のまとめ】

■動画配信(VOD)サービス市場規模
2019年の動画配信(VOD)サービス市場規模推計は2,925億円だったのに対し、2022年は5,305億円と81.4%増であった

■映画館入場者数はどうなってる?
2022年の映画館入場者数および興行収入は、2000年以降では歴代7位の好成績であり、コロナ禍前の水準に戻りつつあることが感じられる結果となった

■映画館と映画館と動画配信サービスという選択肢
消費者は「映画館で観たい作品」「配信でも良い作品」とを判断しながら、そして自身の環境や状況に合わせながら、選択を行っている。「映画体験」という価値も踏まえ、選択をしていきたい。

この記事では、映画館と動画配信サービスを取り巻く状況について見ていきました。

映画館と動画配信サービスは、今後も共存と棲み分けを行っていくと考えられますね。

動画配信サービスU-NEXTは、月額料金内で見放題で楽しめる作品数を増やす「カバレッジ戦略」、独占作品を強化する「ONLY ON戦略」、最新作レンタルの充実などで『レンタルビデオ店の最終進化形』を目指すといいます。

その上で、U-NEXTは映画館と配信の共存関係について、以下のように言及しています。

「ウインドウによる価格帯を守れば、配信と映画館は競合関係ではなく共存関係になる。映画は“習慣性”が大切なエンターテイメントで、映画館に行く習慣がなくなると、映画自体への興味が失われてしまう。ただ、U-NEXTの中では、映画ファンの映画を見る習慣は維持できている。今後はこれをU-NEXTの外の映画館につなげ、映画ファンを広げるお手伝いをしていきたい」

impress watch「配信と映画館は共存する。レンタルビデオ最終形を目指す『U-NEXT』」より引用

動画配信サービスで映画という習慣を維持し、サービス利用者を映画館につなげる、これが今後の映画館と配信の関係性のスタンダードとなりそうです。

私は年間160本ほどの映画を鑑賞しており、その内映画館での鑑賞が60本ほど、配信での鑑賞が100本ほどです。

映画館で映画を観て、そこで興味を持った関連作品を動画配信サービスで楽しむ、といったこともよくあります。逆も然りです。

私たち消費者の行動によって、映画館と動画配信サービスの共存関係はより深まっていきます。

これからも、映画という習慣が広がることで映画という文化に人や資金が集まり、よい作品が作られ続けることを願っています。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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