【ネタバレ解説】映画『マグノリア』ラストの意味は?赦しと癒しの物語

画像引用元:IMDB “Magnolia (1999)”

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こんにちは、はな(@hanahackpq)です。

この記事では、2000年公開の映画『マグノリア』をネタバレありで解説していきます。

映画『マグノリア』は、2021年に『リコリス・ピザ』で話題となったポール・トーマス・アンダーソン監督の長編映画3作目です!

『マグノリア』の制作当時、ポール・トーマス・アンダーソン監督は29歳だったそうです。

はな

29歳でこの作品を作ったなんて、天才ですね…

私は今作を「なんとなくジャケットが気になった」というだけの理由で鑑賞したのですが、とにかく、人生レベルで大好きな作品でした。

人生における偶然もしくは運命をテーマの一つとしている作品なので、私も運命的に今作に出会えて本当にうれしいです。

それでは、今作を詳しく解説していきます!

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はじめに:映画『マグノリア』のおすすめ解説音声!

画像をクリックしたらサイトに飛べます!

私は、映画『マグノリア』を読み解くために数多くのブログやインタビュー記事を読んだのですが、特に参考にしたのが映画評論家・町山智浩さんの解説音声です!

とにかく納得の嵐なので、気になった方はまずこの解説音声を購入して、聞いてみていただきたいです!

はな

『マグノリア』を検索していてふと見つけたサイトだったので「町山智浩…本物…???」と恐る恐る購入しましたが、本物でした。笑

映画『マグノリア』あらすじ・キャスト

監督・脚本ポール・トーマス・アンダーソン(以下、PTA)
キャストトム・クルーズ、フィリップ・ベイカー・ホール、メローラ・ウォルターズ、ジェレミー・ブラックマン、ウィリアム・H・メイシー、ジェイソン・ロバーズ、ジュリアン・ムーア、フィリップ・シーモア・ホフマン、ジョン・C・ライリーほか
公開日2000年2月20日
上映時間187分

映画『マグノリア』のキャストはとても豪華で、当時すでに大人気だったトム・クルーズも出演しています。

配給会社のニュー・ライン・シネマは当初、今作を「トム・クルーズの映画」として宣伝することを望んだそうですが、PTA監督はそれを断り、ポスターにも主要キャラクター9人をほぼ均等に割り振ったそうです。

名役者揃いであるのに、作品自体の魅力で勝負している今作、とても素敵です。

(参考記事:CINEMORE「『マグノリア』劇中曲のリレー歌唱と衝撃場面で世界を熱狂させた、PTAの傑作群像劇 」

タイトルの意味は?

今作『マグノリア』というタイトルは「地名」から引用されています。

今作の舞台となっているロサンゼルス郊外サンフェルナンド・バレーには、Magnolia Boulevard(マグノリア大通り)という通りがあり、PTA監督もその地域で生まれ育ったそうです。

今作でも、実際にマグノリア通りでの撮影が行われています。

はな

ただ、監督はこのタイトルに決めた理由を「『マグノリア』という言葉の語感が好きだから」と語っているので、このタイトル自体には深い意味はないようです。

花の名前の意味も…

また、マグノリアというのは花の名前でもあります。

実際に今作のポスターにもマグノリアの花が描かれていますね。

監督は、地名としてのマグノリアをタイトルに決めた後、マグノリアの花を調べたそうです。

そこで、マグノリアの樹皮から癌の治療薬が取れることを知り、今作における「救い」や「癒し」の象徴としての意味をマグノリアの花に重ねたとも考えられます。

(参考記事:CINEMORE「『マグノリア』劇中曲のリレー歌唱と衝撃場面で世界を熱狂させた、PTAの傑作群像劇 」

エイミー・マンの音楽が作り出す世界観

PTA監督は今作について「一種のミュージカル映画である」と述べています。

その発言の通り、今作では全編に渡ってエイミー・マンの曲が使われています。

今作の制作前、PTA監督は作品のアイデアを断片的には持っていたものの、それらをどのように1つの作品にしようかと悩んでいたといいます。

その時に、エイミー・マンのデモテープを聴き、次々とアイデアがまとまっていったそうです!

特に「私たちは出会ったばかりだけど、もう会わないようにしよう」と歌う“Deathly”という曲は、麻薬中毒の女性・クラウディアのキャラクターに強く反映されています。

(参考記事:『マグノリア』来日記者会見

物語&結末の意味は?

今作では、登場人物たちのどうしようもない物語が絡み合って進んでいきます。

そして、突如空から大量のカエルが降ってくるという衝撃の展開によって、それぞれの物語が穏やかな結末を迎えますよね。

あまりの破天荒な展開ゆえに「この物語はどういう意味だったんだ?」となった観客も多かったと思います。

それでは、今作の物語、結末の意味を解説していきます!

①「FAとEAに捧ぐ」が今作を紐解く鍵

はな

このあたりは、本記事の冒頭でご紹介した町山智浩さんの解説音声をとっても参考にしています!

今作のエンドロールで流れる「FAとEAに捧ぐ」というメッセージですが、FAはPTA監督の元恋人であるフィオナ・アップル、EAはPTA監督の父親であるアーニー・アンダーソンを指しています。

PTA監督の父親は、彼が幼い頃に家族を捨て、他の女性のもとへ行ってしまったそうです。

とはいえPTAと父親の仲は良好だったそうなのですが、一方で、作品の中で父と子の確執を描き、芸術として昇華しているのは興味深いです。

また、PTA監督の元恋人フィオナ・アップルは、幼い頃に性犯罪の被害者となっているそうなのですが、その点は今作のキャラクター、クラウディアと被る点ですね。

さて、ここで改めて気が付くことは、今作で主要なキャラクター全員が罪を背負った父親もしくは傷付いた子どもであることです…!

つまり監督は今作を、自身の父親の罪に対する赦し、また、かつてのフィオナ・アップルのような傷付いた子どもへの癒しとして作ったと言えるのではないでしょうか。

②カエルは何を示す?

今作のラストでは、空から大量のカエルが降ってくるという衝撃的な展開によって、物語が一気に収束へと向かいます。

聖書で見られるような「全ての問題を超自然的手段で解決してしまうというという現象」を演劇では「デウス・エクス・マキナ」という技法で表現するのですが、今作におけるカエルの雨はまさにそれなのです。

自分の理解をはるかに超えた出来事に直面し、罪や苦しみを抱えてくすぶっていた登場人物たちが、ふっと、一歩前へ歩き出します。

「赦し」と「癒し」の物語

これらのことから、今作は罪と苦しみへの「赦し」と「癒し」の物語だと言えます。

誰もが何かしらの罪や苦しみを抱えており、それらの中には「どうにも解決しない」「やり切れない」と感じられるものもあるでしょう。

しかし、人生には自分の予想をはるかに超えた奇跡が起きうるし、それによって抱えていた罪や苦しみが赦され、癒される日が来ることもあるんですね。

「そんなのは映画だから起きることだ」と思うかもしれません。

しかし、私たちの人生は偶然の積み重ねであり、偶然は時に重なって奇跡を起こします。

そういう意味で映画『マグノリア』は、私たちが抱える暗い感情も、いつかきっと赦され、癒されるということを伝えてくれる優しい映画だと、私は感じました。

はな

ちなみに…今作の奇跡として描かれるカエルの雨は竜巻の影響で起きたものと考えられます!実際に2005年にセルビアで数千匹のカエルの雨が降ったことがあるそうです…!

映画『マグノリア』小ネタ4選

ここからは、映画『マグノリア』の小ネタ4選をご紹介していきます♪

①”フランク・マッキー” はトムのための役だった

トム・クルーズは、PTA監督の前作『ブギーナイツ』をとても気に入り、PTA監督の作品への出演を希望していました。

そして、監督も「いつかトム・クルーズと仕事がしたい」と考えていたため、今作へのトムの出演が決まったそうです。

そのため、今作でトム・クルーズが演じたフランク・マッキーは、監督がトムのために書いた役だったそうです!

フランク・マッキーは、当時のトム・クルーズのイメージを覆すような胡散臭くてダーティーな役でしたが、トムは見事に演じきっていました。

今作への出演は、当時世間でアイドル俳優のイメージが強かったトムが、映画俳優として認められていく転機の一つでもあったのではないでしょうか。

(参考記事:『マグノリア』来日記者会見

②『マグノリア』に影響を与えた作品(1)『ショート・カッツ』

画像引用元:Amazon『ショートカッツ』DVD

PTA監督は群像劇が1つのカタストロフィによって連結する今作の構成について、ロバート・アルトマン監督『ショート・カッツ』(1993)から影響を受けていることを公言しています。

『ショート・カッツ』も今作と同じく、3時間超えの群像劇です!

今作が好きだった方は是非観てみましょう!

(参考記事:映画チャンネル「 映画「マグノリア」主人公は9人…奇想天外、衝撃のラストは?<あらすじ 考察 解説 評価 レビュー>」

③『マグノリア』に影響を与えた作品(2)『野良犬』

画像引用元:Amazon「野良犬」DVD

PTA監督は黒澤明作品が好きで、今作で刑事が拳銃を紛失するシーンは黒澤明監督『野良犬』(1949)から引用していることを公言しています。

また、監督は自身のデビュー作が黒澤明監督『生きる』に影響を受けているということも明かしています!

(参考記事:『マグノリア』来日記者会見

はな

黒澤明監督の『生きる』は、今年イギリスでもリメイクされていましたね。『生きる』は、現代にまで影響を与え続ける不朽の名作といっても過言ではないでしょう…!

④今作には丸ごとカットされたシーンがある

今作の中の、黒人女性の家のクローゼットから死体が発見された事件で、黒人の少年が警官ジムに対し事件の真相を示唆するラップを披露するシーンがあります。

このとき少年は、殺人事件のキーパーソンが黒人少年の父親(=のちに、警官ジムの拳銃を盗んだ男)であることを伝えていたのです。

とはいえ、観客がこの事件の真相を分からないのは当然で、というのも、黒人少年とその父親に関するストーリーはほぼ丸ごとカットされているのです。

なんとメイキング映像では、クイズ少年スタンリーと、黒人少年、そしてその父親がファミレスで話すシーンもあったそうです。

はな

今作が大好きな私からすると、カットされたシーンも全部含んだ完全版を観たい…!という気持ちです。

まとめ:「過去を捨てたと思っても、過去は追ってくる」

私は今作のラストで出てくる「過去を捨てたと思っても、過去は追ってくる」というメッセージが大好きです。

すべての今は過去の積み重ねであり、その積み重ねの結果によって、人生は大きく変わっていきます。

もちろん、今作の冒頭で紹介された3つの事件(特に、飛び降りた少年を母親が誤射してしまい、死なせてしまった事件)のように、偶然の積み重ねが悲しい結果へと繋がることもあります。

良いことにしろ、悪いことにしろ「過去は追ってくる」のであれば、私たちに今できることは、今を悲観せず、全力で生き、全力で楽しむことなのではないでしょうか。

今どうにもならない悲しいこと苦しいことがあっても、いつの日か、カエルの雨のような突然の奇跡でどうにかなるものです。

以上、長々と書きましたが、映画『マグノリア』の感想と解説でした!

最後までお読みいただきありがとうございました♪

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