【コラム】映画の邦題はなぜ、どのようにつけられる?| マーケティング戦略としての邦題

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こんにちは、はな(@hanahackpq)です。

突然ですがみなさんは、映画の原題と邦題の違いについて気になったことはありますか?

実は、映画の邦題の中には、原題と全く違うものが多くあります。

例えば『天使にラブソングを…』の原題は『Sister Act』、『ランボー』の原題は『First Blood』だったりします。

この記事では「邦題は誰がつけるの?」「邦題のつけ方にはどのような種類があるの?」「そもそも、なぜ邦題はつけられるの?」といったことについて考えていきたいと思います。

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邦題は誰がつけるの?

そもそも、邦題は誰がつけるのでしょうか?

実は、ほとんどの場合、邦題をつけるのは日本の配給会社なんです!

Forbes Japanでの映画配給会社ビターズエンドのインタビューによると、多くの場合、海外から作品を買いつけした後に、客層と劇場を想定し、邦題を決めるそうです。

一般的に作品を買いつけると、特に観て欲しい客層(ターゲット)を想定しながら、まずは公開する劇場を探して決める。そして、邦題はそのターゲットに届きやすいようなものを考えていく。

私たちが邦題を考えるときに大切にしているのは、原題を極力生かすという大前提のもと、「キャッチーであること」「覚えやすいこと」「他と差別化ができること」「作品の特徴を端的に表すこと」という点だ。これはすべての商品のネーミングと共通することだろう。

場合によっては、監督や製作会社が「このタイトル以外は認めない」と最初から断りが入っていて、一切変えられない場合もあるが、多くは公開する国のタイトルは、その国の配給会社が主となって決めることができる。

Forbes Japan「外出自粛で映画配信が大盛況 海外作品の邦題はどうつけられている?」より引用

このように考えると、映画の邦題のネーミングというのは、映画という1つの商品をどのようにして売っていくかという戦術、つまりマーケティングなんですね…!

はな

映画好きであればあるほど、映画とビジネスを結び付けて考えることは少ないのではないでしょうか。私は、邦題のネーミング=マーケティングの戦術の一つと知り、驚きました!

では、具体的に邦題の付け方にはどのような種類があるのかを見ていきましょう!

邦題のつけ方は3種類

映画の邦題のつけ方には、大きく分けて以下の3種類があります。

①原題をそのままカタカナ
②原題をそのまま直訳
③原題と邦題が全く異なる

では、それぞれの具体例を見ていきましょう。

はな

私が観たことのある作品からランダムに①②③に振り分けてみました!

邦題の付け方① 原題をそのままカタカナ

(C)2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.

まずは王道の「原題をそのままカタカナ」のパターンです。

「原題をそのままカタカナ」の邦題のメリットとしては、タイトルから余計な先入観が与えられないという点、デメリットとしては、タイトルから映画の内容が分かりにくいという点が挙げられます。

最近で言うと『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』がこのパターンに該当します。

特に、ブロックバスター映画(大作映画)の場合は、「タイトルから映画の内容が分かりにくい」というデメリットをカバーできるだけの十分な広告費があることが、あえて原題と異なる邦題を作らない理由なのではないでしょうか。

公開年原題邦題
2023Killers of the Flower Moonキラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
2023Everything Everywhere All at Onceエブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
2013Side Effectsサイド・エフェクト
2005The Machinistマシニスト
2004Lost in Translationロスト・イン・トランスレーション
2001Swordfishソードフィッシュ
1999Lock, Stock and Two Smoking Barrelsロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ
1997The Fifth Elementフィフス・エレメント
1985VIDEODROMEヴィデオドローム

邦題の付け方② 原題をそのまま直訳

『哀れなるものたち』(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

続いて「原題をそのまま直訳」のパターンです。

「原題をそのまま直訳」の邦題のメリットとしては、タイトルから余計な先入観が与えられない上に、日本語なので理解しやすいという点、デメリットとしては、原題が長い文章もしくは短い単語の場合はこの邦題パターンは使いにくい点が挙げられます。

最近で言うと『哀れなるものたち』『瞳をとじて』がこのパターンに該当します。

むぎ

「原題が長い文章もしくは短い単語の場合はこの邦題パターンは使いにくい」ってどういうこと?

はな

例えば…2009年公開の『そんな彼なら捨てちゃえば?(原題:He’s Just Not That Into You)』をそのまま「彼はあなたに全く興味がない」にするとタイトルとしては違和感があったり、2014年公開の『複製された男(原題:Enemy)』をそのまま「敵」とすると、シンプルすぎて意味が分からないよね。

むぎ

たしかに!原題をそのまま直訳してしまうと、魅力的なタイトルにならないものもあるんだね。

公開年原題邦題
2024Poor Things哀れなるものたち
2024Cerrar los ojos / Close Your Eyes瞳をとじて
2020The Invisible Man透明人間
2018Call Me by Your Name君の名前で僕を呼んで
2017Gerald’s Gameジェラルドのゲーム
2014Cruel & Unusual残酷で異常
2013The Great Gatsby華麗なるギャッツビー
2006The Devil Wears Pradaプラダを着た悪魔
1972A Clockwork Orange時計じかけのオレンジ
1991The Silence of the Lambs羊たちの沈黙
1953Singin’ in the Rain雨に唄えば

邦題の付け方③ 原題と邦題が全く異なる

『セッション』(C)2013 WHIPLASH, LLC. All Rights Reserved.

3つ目は「原題と邦題が全く異なる」のパターンです。

「原題と邦題が全く異なる」邦題のメリットとしては、物語の内容を踏まえて、興味を引くタイトルを作れる点、デメリットとしては、タイトルによって観客に先入観を与えてしまう点が挙げられます。

最近で言うと『僕らの世界が交わるまで』『フローラとマックス』がこのパターンに該当します。

正直、邦題でネタバレをされたり、先入観を与えられた経験から、原題と全く異なる邦題は好きではないという方も多いのではないでしょうか…!

もちろん、ディズニー作品などの全世代向けの作品の場合、内容を踏まえ、子どもでも分かりやすいタイトルにすることは大切なのだと思いますが、大人向けの作品の場合は賛否が分かれるところですね。

はな

「原題と邦題が全く異なる」パターンの邦題に特化した記事も後日執筆予定です!

公開年原題邦題
2024When You Finish Saving the World僕らの世界が交わるまで
2023Flora and Sonフローラとマックス
2019El Angel / The Angel永遠に僕のもの
2015Whiplashセッション
2014Love, Rosieあと1センチの恋
2014The Poker House早熟のアイオワ
2014Enemy複製された男
2013The Counselor悪の法則
2011Crazy, Stupid, Love.ラブ・アゲイン
2010Låt den rätte komma in / Let the Right One Inぼくのエリ 200歳の少女
2009He’s Just Not That Into Youそんな彼なら捨てちゃえば?
2009Upカールじいさんの空飛ぶ家
1998Meet Joe Blackジョー・ブラックをよろしく
1995The Shawshank Redemptionショーシャンクの空に
1993Sister Act天使にラブ・ソングを…
1992Basic Instinct氷の微笑

邦題の最近の傾向は?

さて、ここまでは邦題は誰がつけるのか、邦題にはどのような種類があるのかについて見てきました。

私が調べた印象としては、最近の傾向は①原題をそのままカタカナ>③原題と邦題が全く異なる>②原題をそのまま直訳の順に邦題が作られているように感じました。

しかし、そもそも、なぜ邦題はつけられるのでしょうか?

なぜ邦題はつけられるの?

では、なぜ邦題はつけられるのかについて考えていきましょう。

少なくとも、タイトルを英語のままの表記にしてしまうと、英語が分からない人は作品のタイトルを読むことすらできなくなってしまいます。

「あらすじや予告を見て、気になる人にだけ観てもらえれば良い」というのであれば話は別ですが、その作品をなるべく多くの方に届けたいという思いがある限り、邦題の存在は重要になってきます。

そして、①原題をそのままカタカナ、②原題をそのまま直訳、のパターンの邦題に関しては、単に外国語を日本語に置き換え、多くの日本人に理解してもらえるようにするため邦題がつけられていると言えます。

では、なぜ全ての作品が①②のパターンにならないのでしょうか?

これには、配給会社のさらなる思惑があるそうです!

「③原題と邦題が全く異なる」邦題はなぜ作られる?

では「③原題と邦題が全く異なる」のパターンの邦題は、なぜ作られるのでしょうか?

これは、タイトルをより認知しやすく、魅力的なものにするためです。

特に小規模公開映画など、広告にかける予算が少ない作品であればあるほど、いかにタイトルが認知されるか、いかにタイトルから興味を持ってもらうかが重要になります。

例えば『僕らの世界が交わるまで』の場合…

2024年公開の映画『僕らの世界が交わるまで』のタイトルを例に考えてみましょう。

今作の原題は『When You Finish Saving the World』です。

これが例えば、

パターン①「原題をそのままカタカナ」
『ホエン・ユー・フィニッシュ・セイビング・ザ・ワールド』

パターン②「原題をそのまま直訳」
『世界を救うことを終える時』

だった場合、なんとなく内容が分かりにくく、興味がそそられません。

そのため、今作は

◆パターン③「原題と邦題が全く異なる」
『僕らの世界が交わるまで』

というタイトルに行き着いたのではないでしょうか。

結論 | 邦題は多くの人に作品を届けるためのマーケティング戦術

特に商業映画にとっては、どれだけ多くの人に作品を届けられるかがとても大切です。

そのため、映画配給会社は、どのようにその映画をマーケティングしていくかの戦略を立て、その中の戦術の1つとして邦題を作っているのだと考えられます。

まとめ | 邦題の背景にある思惑を考える

この記事では、映画の邦題がなぜ、どのようにつけられるのかをご紹介しました。

実は私は「なんでこの作品にこんな邦題をつけちゃうんだろう…」とモヤモヤした経験も多く、原題と全く異なる邦題があまり好きではありませんでした。

しかし、配給会社が作品自体を十分に理解し、敬意を払っている限り、その邦題は素敵なものであるはずです。

この記事を読んでくださった皆さんも、次に映画を観るとき、原題と邦題を比べて「この邦題の背景にはどんな思惑があったんだろう?」と考えてみてくださいね♪

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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